かんぽ生命は保険料を二重に徴収するなど不適切販売の恐れのある契約が、過去5年だけで約18万件にのぼることを明らかにした。現時点でこの数字は“氷山の一角”ともいわれる。
保険評論家の山野井良民氏が相談を受けたケースでは、郵便局員はこんな誘い文句を使っていたという。
「人生100年時代は医療保障が大切。終身保険は、万が一の時に葬式代の一部に充てられるし、医療特約をセットにすれば医療費の心配もなくなりますよ」
親身になって話しかけてくる局員から勧誘を受けたのは69歳の女性だった。山野井氏がいう。
「70歳以上になると、販売時に子など親族の同伴が必要となるので、その直前を狙われたのではないか。
女性が加入したプランは、保険料を80歳まで毎月約1万2000円払うというもの。10年かけて約150万円を払わせ、死亡保障は100万円にしかならない契約でした。さらに酷いのは、3年後により高額な保険料のプランに乗り換えさせようとしたことです」
局員は「今は葬式代で500万円は必要」と言い出し、新たに死亡保障500万円、入院給付金日額7500円のプランを提案してきたというのだ。
「保険料は毎月5万円近い額になるプランで、年金額を上回っていた。この乗り換えの勧誘を受けた時期に相談があったので、“同額を貯金するべき”とアドバイスして止めました」(同前)
“郵便局に任せておけば安心”という先入観があるから、冷静に考えれば得とはいえない保険に乗り換えてしまうケースが生まれる。
※週刊ポスト2019年8月30日号