日本郵便は600億円の収支改善が見込めるとするが、“かんぽで稼げないんだから、郵便サービス低下は仕方ないだろう”という開き直りではないか。しかも、これが蟻の一穴となりユニバーサルサービスの“転換点”になる可能性があると前出の加谷氏は続ける。
「今回の不正営業がここまで広がった理由は、収益を高めるよう圧力がかかっていたからです。その背景には、現在政府が保有する日本郵政の株式(57%)を売却して、予算の財源にしたい財務省の存在があります。収益が落ちて株価が下がると、売却で得られる予算が減るので、絶対に避けなくてはいけない。
それが今回の不正を受けて日本郵便はノルマを取りやめてしまったことで、収益を挙げる力はさらに下がる。株価維持のためにもっとコストを減らす必要が出てくるのです。このままでは、深い議論もないまま押し流されるように郵便サービスの切り捨てに進まざるをえない」
その兆しはすでに地方に現われているという。
「過疎地域では1日1回配達の原則はすでになし崩し的に維持できなくなっており、2~3日に1回しか配達していない地域もあると聞きます。近い将来、過疎地域から郵便局の撤退に踏み出さなければいけない局面はやってくる。インフラを失って集落を離れる人が出てくるかもしれません」
一連の不適切営業は、郵便局のネットワークがあったからこそ、全国的に被害が広がった。その発覚が引き金となり、今度は地方の郵便局そのものが姿を消すことになるかもしれない
※週刊ポスト2019年8月30日号