過去5年だけで18万件にも及ぶというかんぽ生命、ゆうちょ銀行の“不適切営業”の「担い手」となったのが全国津々浦々に拠点を構える郵便局だ。だが、今回の不祥事でそのネットワーク維持は崖っぷちに立たされた。
郵便局の信用の基礎は、全国津々浦々に張り巡らされた約2万4000の店舗網で、どこに住んでいても貯金(決済)や生命保険に加入でき、離島や山奥でも郵便が配達されるというユニバーサルサービスにある。
とくに郵便物の配達については、〈週6日、1日1回の配達〉〈原則3日以内に送達〉などの維持が絶対の使命とされてきた。
そうしたサービスを維持するために、国営時代も2007年の民営化後も、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の稼ぎで不採算の郵便事業を支える経営構造になっている。
日本郵便は正社員だけで実に19万人、グループの9割を占める巨大組織だが、連結経常利益の8割はかんぽ生命とゆうちょ銀行が稼いでおり、郵便局からの貢献はわずか2割に過ぎない。その2割でさえ、金融2社からの手数料で捻出されている。
だが、日本郵政はかんぽ生命の不祥事発覚を逆手にとって不採算部門の郵便事業の縮小、“切り捨て”に動き出したように見える。
日本郵便の要望を受けた総務省が8月6日、「土曜日配達の廃止」を容認する方針を打ち出した。経済評論家の加谷珪一氏が解説する。
「表面的には郵便局員の働き方改革ですが、内実はコスト削減です。インターネットの普及で郵便数は急速に減少、国内で172億通(2017年度)とピーク時(2001年度)から35%も落ちた。その結果、毎年赤字幅が200億円規模で拡大している。土曜配達を取りやめることで、出勤する局員の大半を平日の業務に回せると見られています。また預かり日の翌日配達も廃止して深夜勤務の人件費を抑制できる」