株価下落はトランプ大統領の再選に致命傷となる
日本経済新聞は26日、「中国の劉鶴副首相が26日の重慶市内での講演で、米国との貿易戦争について“冷静な態度で問題を解決したい”と語り、米国に協議再開を呼びかけた」と報道しているが、劉鶴副首相はこの日、「2019年国際知能産業博覧会」で講話を行った際に、米中貿易戦争に関して触れ、これまでの発言を繰り返しただけである。
米中の反応の違いを客観的にみると、トランプ大統領側にやや焦りがあるようにも感じられる。
事実上、トランプ大統領の発言一つで政策が決定され、それに対してすぐに中国が応酬するような状態であるが、こんなことでは投資家たちは堪ったものではない。FRB(連邦準備制度理事会)に対するトランプ大統領のプレッシャーも含め、いちいちトランプ大統領の一挙手一投足に過剰反応していたのでは、“下がって売って、上がって買って”を繰り返すことになってしまう。
もう一度シナリオの原点に戻った方がよさそうだ。トランプ劇場は、有権者を楽しませるためのショーであり、“中国たたき”は票になる。しかし、一方で、株価下落はトランプ政権一期目の成果を台無しにし、次期大統領選ではこれが致命傷となる。
中国が途中から、真剣勝負モードになっているので、ショーが長引いているが、用心深く、自国内政の安定を第一に考える中国が、積極的に勝ちにいくようなことはしないはずだ。であれば、トランプ大統領が落としどころを間違えたりしない限り、最終的には激戦の上、引き分けとなり、両者が握手をして終わるシナリオとなるはずだ。高値追いはまだ早いが、安値での投げは禁物ではなかろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。