田代尚機のチャイナ・リサーチ

苦境に立つ韓国企業 サムスン電子が中国で大苦戦を強いられるワケ

中国市場で大幅減収となっているサムスン電子(Getty Images)

 韓国を代表する企業であるサムスン電子の業績悪化が目立つ。2019年1-3月期の業績は13.5%減収、営業利益ベースでは60.2%減益、純利益ベースでは56.0%減益であった。地域別の売上高をみると、アメリカ、EU、中国、韓国の順にウエイトが高いが、全体の売上高の15.0%を占める中国は18.1%減収で、部門別では最も大きな減収率となった。

 サムスン電子の中国ビジネスは現在、大きな曲がり角を迎えている。まず、主力のスマホ事業が低迷している。中国の前瞻データベースによれば、2019年1-3月期におけるサムスン電子の世界スマホ出荷台数シェアは22.8%。第2位の華為技術(ファーウェイ)は18.8%、第3位のアップルは12.8%であり、この数字だけ見れば、サムスン電子はこれら2社を大きく引き離して第1位を死守している。とはいえ、中国企業の躍進が著しく、第2位の華為技術に続きアップルを挟み、第4位には小米が8.9%、第5位にはOPPOが8.7%と続いている。

 スマホはモバイルインターネット革命の中核となる製品だ。2007年にiPhoneを開発したアップルが市場を切り開き、サムスン電子がそれに追従し、やがて追い越し、一時は両社が世界市場を席捲する時代もあった。

 しかし、2011年にテンセントがスマホ向けの対話アプリ「微信」を開発、それが中国国民の間に瞬く間に普及した。加えて、アリババが展開するEC取引が隆盛を極めたこともあり、QRコードを使ったモバイル決済も急速に普及した。こうした需要面からの強力な牽引があり、中国のスマホ市場は爆発的に拡大した。

 2019年1-3月期における中国向けスマホ出荷台数は8800万台で世界全体の28.0%を占め、中国は世界最大のスマホ消費国となっている。ちなみに第2位はアメリカで3640万台。台数シェアは11.6%で、中国の4割に過ぎない。

 中国における市場シェアをみると、第1位はファーウェイで34.0%、第2位はOPPOで19.1%、第3位はVIVOで17.1%、第4位は小米、第5位はアップルとなっている。サムスン電子は圏外である。また、サムスン電子の発表したデータによれば、2018年における中国市場シェアは0.8%に留まったようだ。サムスン電子は世界最大市場である中国で壊滅的なダメージを受けている。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。