イギリスのボリス・ジョンソン首相は、10月末日をもって、イギリスのEU離脱(ブレグジット)の実現を目指している。だが、それが実現した場合、イギリス経済はどうなるのだろうか。ブレグジットが抱える問題点を、経営コンサルタントの大前研一氏が指摘する。
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9月3日にイギリス議会が再開される。そしてここからイギリス発の大波乱が幕を開ける。
周知の通り、イギリスではテリーザ・メイ前首相の辞任に伴う与党・保守党の党首選に勝利したボリス・ジョンソン氏が7月下旬、新首相に就任した。日刊紙『デイリー・テレグラフ』の記者や週刊誌『スペクテイター』の編集長などを経て2001年に政界入りし、ロンドン市長や外相を務めた人物だ。
その外見や強硬かつポピュリズム(大衆迎合主義)の政治姿勢、失言の多さから「イギリスのトランプ」の異名をとるジョンソン首相が目指しているのが、10月31日の「ブレグジット(イギリスのEU離脱)」だ。
しかし、これには大きく三つの問題がある。
まず、現在はイギリスからEUに輸出する工業製品の関税は無税だが、離脱後は関税を課されるため、EU市場における競争力が大きく低下する。だから、すでに多くの企業がイギリス国外に移転するか、事業を縮小している。日本企業も、パナソニックとソニーが欧州本社をオランダに移し、本田技研工業は撤退を発表、日産自動車もイギリス中部にあるサンダーランド工場での「エクストレイル」次期モデル生産計画を取りやめた。