「モデル世帯」はもはや「理想の世帯」
財政検証では「モデル世帯」が基準になって、年金額が計算された。現在、モデル世帯の月額年金は22万円。政府によれば、モデル世帯は将来も所得代替率50%が確保できるという。ところで、「モデル世帯」とは何だろうか?
「40年間、サラリーマン人生をまっとうした夫と、その専業主婦の妻のことを『モデル世帯』と設定しています。そうすれば、夫の厚生年金も、夫婦で満額の国民年金も受け取れて、都合がいいんです。
よく考えてみれば、今どきそんな夫婦はめったにいない。若年層の非正規雇用の割合は増え続け、終身雇用の会社員と専業主婦の夫婦は、今や『理想の世帯』に近い。そんな実態とかけ離れて、年金を多く受け取る夫婦をモデルにすること自体、現実に即していません」(北村さん)
今回の検証では、現在の65才と同水準の年金額をもらうためには、何才まで働き続けなければならないかという試算も盛り込まれた(表を参照)。
成長率が横ばいのケース(5)の場合、現在の30才は68才4か月、40才は67才2か月まで働いてようやくその水準になるという。
「できるだけ年金を払わず、70才まで働かせて保険料を徴収したいという意図が透けて見えます。充分な年金額が欲しいなら、長く働いて加入期間を増やすしかないぞ、という“脅し”にしか聞こえません」(北村さん)
※女性セブン2019年9月26日・10月3日号