そうした巨額の防衛装備品の購入が、日本の安全保障上、不可欠のものであればやむを得ない。
だが、防衛省の「防衛生産・技術基盤研究会」委員などを務める防衛問題研究家・桜林美佐氏は防衛予算のバランスが崩れていると指摘する。
「FMSで最新鋭の防衛装備を得られるメリットは大きい。悩ましいのは、高額な最先端装備の購入が増えると、車両や隊員の装具など日常的な経費を切り詰めなければならないことです。自衛隊が使う一般車両も40年前の80式がまだ使われ、修理部品がないから故障で使えない車両が多い」
最新鋭装備のイージス・アショアについても疑問が提起されている。国際政治学と国家安全保障論を専門とする松村昌廣・桃山学院大学法学部教授が指摘する。
「イージス・アショアは未完成で今後もどこまで予算が膨らむか未知数。装備することの合理性は、費用対効果の面では高くありません。では、なぜイージス・アショアを調達したのか。研究者の立場としては、日米関係を考慮して“上(官邸)で決めた”としか言えません」
保険料はアップ、年金はカット
安倍首相は「幼児教育や高等教育の無償化に安定税収である消費税が必要だ」と消費税率を10%に引き上げる。
しかし、米国はこの増税のカネも狙っている。トランプ大統領はこの9月に在日米軍の予算の一部を「メキシコ国境の壁」建設に回す方針を打ち出し、そのかわりに日本政府に“基地負担金をもっと増やせ”と要求してきた。増税でカネが入る安倍首相に総額2兆円の壁建設費を丸々肩代わりさせようという魂胆が透けて見える。
「社会保障費にしか使わない」と国民に約束したはずの6年前の消費増税のカネは、国土強靭化やTPP対策の農業補助金、そして米国への貢ぎ物に消えた。
そうした社会保障予算の壮大な流用の結果、現役世代は年金保険料アップ、年金生活者には受給カットが行なわれた。
あのカネがあれば、保険料アップも年金カットも防げたのではないか。国民が使途に目を光らせなければ、今回の消費増税のカネも、知らないうちにどこかに消えていく。
※週刊ポスト2019年10月4日号