フェイスブックの会員数(Monthly active users)は2019年6月末時点で24億1000万人に及ぶ。リブラの発行管理については、フェイスブックのほか27社が会員となるリブラ協会が行うが、会員の中には、VISA、マスターカード、ペイパルなどの決済業務を行う企業が含まれている。リブラが発行されれば、彼らの協力を得て、世界規模でいろいろな取引の決済通貨として、短期間で広く使われるようになるだろう。
中国人にリブラの利用を禁止することができるだろうか。現在、フェイスブックの利用は禁止されているが、海外のVPN(仮想プライベートネットワーク)を使えば、簡単に利用できてしまうといった現実がある。
中国人民銀行は、借名取引、マネーロンダリングをはじめ、違法な取引による資金流出に苦しめられているが、リブラの普及はその取り締まりを壊滅的に無効にさせてしまう可能性が高い。中国人民銀行にとって、デジタル通貨の発行は、そうした違法取引の取り締まりを強化するとともに、中国へのリブラ進出に対抗するために、不可欠なのである。
国家といえども、技術進歩を食い止めることはできない。リブラの発行は日本にとっても影響が大きいが、それに、人民元デジタル通貨の発行が加わることになる。日本においても、デジタル通貨の発行が不可欠となるかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。