「ロストジェネレーション」と呼ばれる、就職氷河期世代(現在30代後半~40代前半)の貧困が指摘されている。非正規雇用でなんとか食いつないでいるが、将来の展望が見えてこない──40代前半の男性・ダイスケさん(仮名)もその一人だ。ダイスケさんの場合、ゲイであることが「日々のむなしさに拍車をかけていると感じる」という。
アメリカのデータだが、「全米家族調査」によると、異性愛女性の貧困率は21.1%、異性愛男性が15.3%であるのに対し、レズビアンは22.7%、ゲイは20.5%と、同性愛者のほうが若干貧困率が高くなっている。アメリカでは特に、いわれなき差別に遭いやすい地元を飛び出し、職がないまま都市部に流れ込む若年層の同性愛者が多いという事情もあるだろう。
日本ではアメリカほどの事態は起きていないかもしれない。性的指向によって差別されることはあってはならないが、日本でも現実には、レズビアンにも、ゲイにも、相対的に余裕のない生活をしている人たちはいる。
ダイスケさんは、年収約120万円とされる「貧困ライン」よりは少し上だが、年収は同年代平均の半分未満だ。
「とりあえず生活には困っていません」
その日は彼の休日だった。カゴに溜まった洗濯物を持って、アパートの前にあるコインランドリーに向かう。
ダイスケさんは渋谷区のはずれに住んでいる。家賃5万円のワンルームで、洗濯機置き場がない。ここには20歳頃から住み始め、もうすぐ25年経つ。
「引っ越すのが面倒というのもあるけど、引越代を工面するのが難しくて」