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ロスジェネ世代の貧困事情、40代ゲイ男性・ダイスケさんの場合

背くらべからおりられない

 つい周りを気にしてしまうのは、居酒屋での支払いだけではない。

 同じ年代の友だちのなかには、都心の分譲マンションを購入していたり、広い部屋で彼氏と同棲していたりといった人もいる。まとまった休みには海外旅行をし、ブランド物の「かわいい」服を自由に買っている人を見て、うらやましくも思う。

「楽器をやっている友だちとか、カメラが趣味の人とかもいて、いいなあとは思うんですけど。どれもだいたい初期投資にお金かかるし、自分には無理ですね」

 自分の年齢から新しく趣味を始めるのにも、どこかハードルを感じる。「きらきら」とした周囲の生活に憧れ、嫉妬する自分がいる。くらべるものが無いのに、一生懸命背くらべしようとしてしまう。

「なんとなく生きてこられちゃった。でも、趣味もないし、このまま独りで大丈夫かなって漠然と考えることは増えた」

 ダイスケさんの友人に、急病で倒れて思うように動けなくなった人がいる。生活状態が悪くなり、実家に戻らざるを得なかった。何かがきっかけで仕事ができなくなったら、今の生活すら維持できなくなる怖さを感じた。

「自分の生き方のことでケンカしてから、何年も親とは疎遠。実家を頼ることはできない。不安が止まらない夜は、パタッと倒れて死ねたら楽になれるかなと思う」

 笑いながら言う彼の手は、固く握られていた。

◆取材・文/石田翼(ライター)

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