かつては電気街として、その後はサブカル好きな人たちが集う“オタクの街”として有名になった東京・秋葉原。今では、多くの外国人たちが集う、東京有数の観光地になっている。一方で、街の変容に伴い、かつてと比べて最近訪れる機会が減っているという人も少なくないようだ。当事者たちにその本音を聞いた。
1990年代後半、大学進学時に初めて秋葉原に訪れたという40代男性会社員・Aさん。秋葉原をこう振り返る。
「私は大学時代、PCパーツとゲームを求めてよく通っていました。当時は怪しい客引きやお店もあって、けっこうカオスな雰囲気がありましたね。電気街口にはサトームセンがあって、良く待ち合わせていました。2000年代初頭あたりまでは、海賊版DVDを売っている謎の露天商もいましたね」
Aさんは、「今はある意味落ち着いた観光地で、昔とは違うイメージ。でも、いつの時代も需要があるのはいいことです」というが、自身はここ数年、秋葉原に行っていない。「街にワクワク感がなくなってしまった」と、その理由を明かす。
「単純に歳をとって、昔ほどゲームをやらなくなったことや、PCパーツなどはネットでも買えるようになったせいもあると思いますが、以前は不自由さと居心地の良さが共存していたところに街の魅力を感じていたのかもしれません。ジャンクを漁って、何に使えるか考えるのも好きでした。飲食店が少なくて食べる場所に困ったのも、ある意味楽しい思い出です。今の秋葉原は、ワクワクしなさそうというか、あえて出向く必要がないんですよね」(Aさん)
大まかに言えば、秋葉原は電気街からオタクの街、観光地と姿を変えている。なかでも直近で大きな転換期となったのは2005~2006年頃だろう。つくばエクスプレス開業、ヨドバシAkibaに秋葉原UDXなどが立ち、再開発が進んだ。メイド喫茶ブームなどもあり、街の様相やオタクの価値観も大きく変わった。