30代の男性会社員・Bさんは「それまでなんとなく肩身の狭かったオタクが、世間で少し肯定的に捉えられ始めた時代だった」と話す。
「あの頃は歩行者天国で、コスプレとかパフォーマンスとかしていたので、よく見に出かけました。僕も当時流行っていた『ハルヒダンス』をネットで知り会った人とたちと踊ったことがあります。そういう人たちがいる街並みを見るのも好きったので、そういう光景が消えた最近は寂しい限り。『電車男』ブームもあって、世間で否定的にとらえられていたオタクという言葉が、一般にも受け入れられ始めたころだったと思います。今の観光地化も、ある意味で秋葉原の特徴だった異様さや怪しさが、肯定的に捉えられるようになったからこそな気がします」
Bさんは、会社の後輩の20代男性が「秋葉原によく行く=オタクというのはおかしい」と話しているのを聞いて驚いたという。
「後輩は、秋葉原にもコミケにも行きませんが、“オタク”を自称しています。私は趣味を理解してくれる、もしくは共有できる相手がいることに喜びを感じて秋葉原に出向いていましたが、今は、“オタク”という言葉も、単純に趣味や嗜好にこだわりのある人、という感じ。そうなると、別に秋葉原でなくてもどこでもいいわけです。それに今はオタク文化の理解や共有はネットでも可能。さらに大概のものはAmazonかYouTubeでこと足りますから」(Bさん)
“腐女子“を自任する30代の女性会社員・Cさんは、最近は、秋葉原よりも池袋を選択するケースも多いという。
「秋葉原より“濃く”ない池袋に居心地の良さを感じる人もいます。池袋のある豊島区は、区としてアニメ・マンガの街をうたっているし、池袋にはアニメイト本店がある。その他安い飲食店も多く、映画館などの娯楽施設も充実しているので、一日遊んでいられるんです。そこまで知識があるわけではなかったり、ちょっとしたアニメ好きという人は、池袋で映画鑑賞してアニメイトに寄るなど、ライトに“オタク文化”を楽しんでいるようです」(Cさん)
オタク文化の変容とともに、秋葉原の役割も変わりつつあるようだ。