前出の米川氏もいう。
「たとえば軍艦巻きは、乗せるネタの量を減らして原価率を調整できる。軍艦に薄切りのキュウリを添えてイクラやウニの量を減らす回転寿司チェーン店もあります」
こうした“企業努力”により、客単価全体の原価率を抑えているのだ。
ただし、いつも同じネタばかりでは固定客に飽きられてしまう。そこで、回転寿司店は期間限定メニューなどの“目玉商品”に力を入れている。
「“蟹フェア”や“ふぐ祭り”などの高級食材を主役にしたキャンペーンは、間違いなくレギュラーメニューよりも原価率は高い。その意味で“お得なネタ”と言えるでしょう。これが実現できるのは、期間限定で大量に仕入れて、仕入れ値を下げているから。とはいえ、目玉商品目当てのお客も同じネタばかり食べるわけではないため、回転寿司店はキャンペーンで集客に繋げたい意図が大きい」(米川氏)
では、「生エビ」「生サーモン」など“生”とつく、ちょっと値の張るネタはどうか。
「1皿100円ではなく150円や200円に設定されていることも多く、“安いほうにしておこう”と躊躇される方もいらっしゃるようですが、鮮度重視で保存期間が短いぶん、冷凍ネタより原価は高くなる。そのため、客側から見れば割安だと言えるでしょう」(同前)
鮮度の高いネタを提供するために、近年ではレーンで回ってくる寿司を取るのではなく、食べたいネタを注文する形式の回転寿司店が増えてきた。ある回転寿司店の店長が明かす。
「中には皿が回るレーンとは別に、注文した品が直接目の前に運ばれてくる高速レーンを導入する店もあります。新鮮なネタが食べたいなら、同じネタが目の前を回転していても、遠慮せずにオーダーすべきです。ただ、ネタが1つも回っていないと回転寿司の雰囲気が出ないので、原価の安いネタだけを廃棄覚悟で流している店もあります」
そう聞くとデメリットが大きいように思えるが、「食べたいネタだけを注文するため、廃棄ロスは従来の5%から1%まで減っている」(経済誌記者)というメリットもあるようだ。
※週刊ポスト2019年11月29日号