株式相場や為替相場には、「アノマリー」いう言葉がある。値動きについて理論的な根拠があるわけではないが、経験則としてそうなることが多いものを指す。年末年始にもその季節に応じたアノマリーが存在するが、はたしてどのような相場になるのだろうか。カリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが、今年末の市場と今後注目すべきアノマリーについて解説する。
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投資家なら年間のアノマリーは頭にいれておくべきで、中でも海外と日本の文化の違いからくるアノマリーには気をつけておきたいところです。例えば、日本の年末は皆がお休み気分となりますが、海外ではクリスマスまでが休みで、クリスマスを過ぎれば投資家は取引しています。日本人がお正月を満喫する時期、海外投資家はギアをかけ始め、お正月明けに本邦投資家が「さぁ、トレードするか」というときには、もう相場の波に乗り遅れているということもよくあります。
さて、例年大きな値動きの起こりやすい年末の株式相場ですが、今年はそこまで悲観する動きにはならないと考えています。今年、日本は新元号の年を迎え、ご祝儀相場のような状態が続いていました。それが年末にかけてクラッシュに見舞われれば、政府にとっては目も当てられません。日銀はETF(上場投資信託)の買い入れを継続しており、今は政府と日銀が株式市場を下支えしているという印象です。
アノマリーの中でも特に考慮しておきたいのは、2020年11月に投開票されるアメリカ大統領選挙です。アメリカ大統領選挙の前年度は株が下がりにくいといわれ、実際にNYダウは今年史上最高値をたびたび更新しています。米中貿易摩擦という不確定要因はありますが、目先は、相場が大崩れするような可能性は低いのではないでしょうか。
さらに、アメリカ大統領選挙の年とその翌年はドル高になる、というアノマリーもあります。1984年以降のドル円相場を振り返ると、そうした動きを確かに確認できます。
アメリカ大統領選挙の年はドル高が6回で、ドル安が2回、その翌年はドル高が6回、ドル安が2回と、いずれもドル高で推移するケースが多かったです(大統領選挙の翌年は直近5回、全てドル高)。私はチャート分析からドル円の上昇方向のサインを確認しており、消費増税を経てドル円は来春にかけて円安方向で推移すると考えていましたが、結果的にアノマリーに沿う予想となっていました。
株式市場に目を向けると、11月から12月にかけて、相場が一旦調整する局面を迎えれば、買いポジションを仕込むという選択肢も検討できます。年末は流動性が低くなり、相場が荒れやすくなるため、無理にポジションを取る必要はありません。もしトレードする際は、チャート分析でエントリーポイントを見極めることも忘れないようにしたいです。
ここで紹介したようなアノマリーについて、「たまたまそうなった」と考える方もいるでしょうが、これらの法則を裏付けるそれなりの要因は存在します。投資家心理や経済動向、決算等企業特有の節目など、要因は様々ですが、その点を勉強しておくと今後の投資の糧になるでしょう。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)