教育とは「だれしもに等しくチャンスがあるもの」であるべきだ。しかし、文科相は、つい口が滑って本音を言ってしまった。「身の丈に合わせてがんばって」。大臣の無知と軽薄さはさておき、奇しくもこの言葉は、日本の教育の根源的な問題を表している。私たちは今こそ、その問題を真正面から見つめるべきだ。
「裕福な家庭の子が回数を受けて、ウオーミングアップできるみたいなことがもしかしたらあるのかもしれないけど、『身の丈』に合わせて、勝負してがんばってもらえば」
萩生田光一文科相が10月24日、来年度から始まる大学入学共通テストで導入予定だった英語の民間試験についてそう発言し、思わぬ大騒動が起きた。
英語の民間試験は2回まで受けられるが、受験料が高額で試験会場も都市部に集中するため「親の経済状況によってチャンスに差がついてしまう」「地方の受験者に不利」といった指摘がされてきた。
ところが、萩生田氏は、それは分相応でしかたがないことだと切り捨て、「教育格差」を是認するかのような態度を取った。つい本音が出てしまったのだろうが、一気に社会問題化することになった。
来年受験を控える高校2年生の娘がいる東北在住の母親(45才)は怒りに震える。
「ウチの地域からだと、2回受験すれば、検定料や交通費などで5万円ぐらいかかるんです。娘の一生がかかっているので希望通りにしてあげたいですが、田舎者や貧乏人は高望みするなということなんですか? そんな考えで大学受験のルールが決められているなんて、愕然としました」