ネットで時折、目にすることのある「生活保護バッシング」。生活保護は「ナマポ」というネガティブな意味を込められたスラングで呼ばれ、受給者は働く意志がないぐうたらで、税金に寄生する迷惑な存在と扱われることもある。
2017年には、神奈川県小田原市の生活保護担当職員が、受給者からカッターナイフで切り付けられたことを契機に「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と書かれたジャンパーを着ていたことが報じられ、問題視された。このジャンパーは2007年から着られていたという。だが、当時のネットの空気としては職員を擁護する声の方が多く、受給者への風当たりが強かった印象だ。
バッシングする人の大半は、あくまで「不正受給叩き」だと主張するだろう。とはいえ、そうした一部の不正受給者への批判の声が、生活保護受給者全体へのバッシングにつながっている側面もある。実際の生活保護受給者の苦悩に、あらためて耳を傾けてみたい。
神奈川県在住の40代女性・Aさんはうつ病を長く患っており、働くことが困難だ。両親はすでに他界しており、頼るべききょうだいもいない。生活保護生活はもうすぐ20年だ。朝、起きるのが辛く、人混みにまみれて駅へ行き、電車に乗るのも苦痛だ。そもそも働き盛りの20~30代を職に就けずに過ごしてきたため、今どんな仕事ができるのかも分からず、うつ病が寛解したとしても、その後どのような仕事ができるか分からない。
そんな彼女が絞り出すように言ったことがある。
「ほんの少しでもいい、私は仕事がしたいです。『収入申告書』を役所に出したいんです」
生活保護受給者は、月に少額でも収入があれば役所にその旨を報告しなければならない。当然、収入が多いと生活保護は受けられなくなる。収入申告書提出が義務づけられているのは、収入があるのに「ない」と言い張って不正受給するようなケースをなくすためだが、Aさんは生活保護を受給している現状を「恥ずかしい」と感じている。だからこそ、3000円だろうが5000円だろうが金額を記載し、役所に提出したいと考えているのだ。それこそ自分自身には「価値がある」と思える証になるから。