今後の三菱と三井の命運を握るのは、“問題企業”の行く末だ。「その代表分野は『電機』です」と指摘するのは、『経済界』編集局長の関慎夫氏。
「いわゆる総合電機メーカーは長らく独立系の日立、三井系の東芝、そして三菱系の三菱電機という序列で見られており、かつて三菱電機は売上高で“万年3位”と揶揄されました。ところが東芝が不正会計で一気に赤字転落するとその後もなかなか浮上できず、ついに三菱電機が売上高で東芝を抜くようになりました」
ただし、三菱電機は単なる「敵失」で浮上したのではないと関氏が続ける。
「もともと三菱電機は利益率の高さという強みを持ち、地味ながら1990年代から一貫して『選択と集中』と言い続けました。実際これまでに携帯電話やパソコンといった先の見えない事業をバッサリ切り捨てる一方で、FA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)に必要となる産業メカトロニクスなどに経営資源を集中して、コツコツと業績を伸ばしました」(関氏)
東芝も2000年代までは「選択と集中」を進める会社として称賛されたが、半導体や原子力への注力が裏目に出た。現在の東芝の方向性にも関氏は疑問を抱く。
「東芝は経営再建のため、医療事業の東芝メディカルシステムズや半導体事業の東芝メモリなど、今後成長が期待できる分野まで切り離しました。三菱電機と違って将来性が見られず、この先の再浮上は厳しいでしょう」(関氏)
もともと三井グループとの繋がりが深く二木会(*)にも名を連ねる東芝だが、現在の車谷暢昭・会長兼CEOは旧三井銀行出身で三井住友銀行副頭取まで務めた人物。三井物産とも提携するなど、三井カラーが濃くなっている。それゆえに、東芝の低迷は三井にとって頭の痛い問題だ。
【*三井グループは毎月第二木曜日に中核企業の社長が集まり、情報交換を行なう「二木会」を開催している】