一方の三菱にとっては、三菱自動車の行方が不安材料となっている。三菱自動車は、三菱グループの軸である三菱重工業からスピンアウトした会社であり、その都度の三菱グループの力量によって運命を左右されてきた。
「2004年に三菱自動車が大規模なリコール隠しで経営不振に陥った際は三菱重工、旧東京三菱銀行、三菱商事が支援して苦境を脱しました。しかし2016年の燃費不正の際は三菱グループが弱気になり、間隙を縫って出資した日産自動車に救済された。グローバルに競争が激化する自動車産業の中で、三菱自動車は日産と組むことで年間1000万台以上を販売する『1000万台クラブ』の仲間入りを果たし、将来の展望が開けた面がありました」(関氏)
しかし、頼みの綱である日産がゴーン事件で迷走し、三菱自動車は3度目の危機に追い込まれた。困難を自力で回避できず、他力を頼らざるを得ないところに三菱自動車の根本的な弱みがある。
対して、自動車業界の盟主であるトヨタ自動車は三井との結びつきが強い。
「トヨタの生みの親である豊田佐吉の豊田自動織機を三井物産が支援したほど両社の関係は古い。戦後すぐにトヨタが経営危機に陥った際も窮地を救ったのは三井銀行でした。
特に近年はトヨタファイナンスなどトヨタの金融系事業から三菱UFJ系(旧東海銀行)の幹部が一掃され、三井住友銀行系がトヨタの販売金融を担う体制に刷新されました。トヨタが新規に始めた自動車リース事業のほか、系列の損保や住宅事業でも三井グループとの関係が強化されています」(関氏)
※週刊ポスト2020年1月3・10日号