ニューヨークダウ、ナスダック総合指数、S&P500と米国を代表する株価指数が2019年末、揃って史上最高値を更新し続けた。
雇用統計に不動産価格、鉱工業生産指数など米国を取り巻く各種経済指標を見ても、米景気そのものが好調に推移しているのが背景にあるのはもちろんだが、「もうひとつ大きな要因がある」と分析するのは、グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏だ。
「それは膨大な規模の『自社株買い』です。2018年9月~2019年8月までの1年間で、S&P500社の自社株買いは78兆円にも及びました。このうちアップル1社だけで7兆円以上もの自社株買いが行なわれているのです」(戸松氏・以下同)
企業が自社株買いを行うと、需給が良くなることもあるが、発行済み株式数が減る。会社の利益が変わらなければ、株式数が減ることで1株当たり利益が増えるため、1株当たりの分け前が増えることが好感されて株が買われ、株価が上昇するのが「自社株買い」の効用とされる。
日本でも自社株買いを実施する企業は多いが、日本企業のトップであるトヨタ自動車でさえ年間でせいぜい3000億円規模にすぎず、米国企業の自社株買いがいかにケタ違いなのかがわかるだろう。
「好景気に沸く米国には世界中からおカネが集まり、それらが米国株や米国債に流れ込み、自社株買いでさらに株価を押し上げている。たとえば、世界各国の年金基金は株価が上昇するとポートフォリオを一定に保つため、株式の比率を下げようと売らざるを得ないが、自社株買いは基本的には買ったら売らない。
それを後押ししているのが、トランプ政権が2018年に導入したレパトリ減税です。海外で稼いだおカネを米国に戻す場合は軽減税率が適用されるため、米企業では自社株買いが一気に拡大した。その威力はすさまじいものがあります」(戸松氏)
自社株買いが後押しする格好で、米国株上昇の勢いはまだまだ続いていきそうだ。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しなどを紹介するメルマガ「日本株通信」も展開中。