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平成企業合併の成功と失敗 LIXIL、みずほ、三越伊勢丹など

意思決定の遅れを招いた

 合併により業績を伸ばす企業がある一方、スケールメリットを活かせずにいるケースも少なくない。

 多くの識者が「失敗の代表例」と指摘するのが、2002年から段階的に日本エアシステム(JAS)と合併した「日本航空(JAL)」だ(2006年完了)。全日空との「2大航空会社対決」を制する目論見は外れ、合併からわずか8年後の2010年に日本航空は経営破綻に追い込まれた。須田氏は「日航は『選択と集中』に失敗した」と指摘する。

「日航は『日の丸航空会社』との意識が強く、政治家が介入した不採算路線を廃止できなかった。JASを吸収合併したらどのようなメリットとデメリットがあり、どう経営の足を引っ張るかの検討が不十分だったと言える」

『経済界』編集局長の関慎夫氏は、2002年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が合併して設立された「みずほ銀行」を挙げる。

「先に第一銀行と勧業銀行が合併してできた第一勧業銀行で人事交流が進まなかった反省から、みずほ銀行は3行合併を選択しました。

 多数決で議決すれば、行内に対立が起こらないとの読みでしたが、フタを開ければ3すくみになって迅速な意思決定ができず、2002年の営業初日に大規模なシステム障害の発生につながった。3メガバンクの中でみずほが遅れを取っている背景には、そうした事情もあると言えるでしょう」

 拡大路線が“お家騒動”を招いたのがLIXILグループだ。建材大手のトステムと製陶大手のINAXを母体に、2011年にサンウエーブ工業、新日軽、東洋エクステリアが合併して誕生したLIXILは、トステム創業家出身の潮田洋一郎氏が長く経営トップの座を占めた。合併後も潮田氏の意向を受けて積極的な海外M&Aを推し進めるも赤字が続いた。

「2016年にLIXIL社長兼CEO(最高経営責任者)になった瀬戸欣哉氏が拡大路線を修正すると潮田氏との溝が広がり、瀬戸氏のCEO退任をめぐって対立が激化。瀬戸氏のバックにINAX創業家の伊奈啓一郎取締役が加わり、2つの創業家によるお家騒動が勃発し、LIXILグループの2019年3月期の連結営業利益は150億円の赤字(前期は591億円の黒字)となりました」(関氏)

 その後、瀬戸氏がCEOに復帰して市場の信頼は回復したものの、お家騒動は拡大路線が必ずしも成功しないことを如実に示した。

※週刊ポスト2020年1月17・24日号

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