平成の経済を振り返るとき、大企業の再編・統合を避けて通ることはできない。バブル経済の崩壊という時代の要請があったにせよ、中には異なる企業風土がぶつかり合うこともある。歴史のある大企業ほど、これまでの“文化”を捨て去ることは難しい。
ジャーナリストの須田慎一郎氏が例を挙げるのが、2006年に東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して誕生した「三菱UFJ銀行」だ。
「大阪に本社があった三和は下町の商人、外国為替専門の東京はストライプのシャツに派手なタイの外務官僚のようなイメージだったのに対し、三菱は紺かグレーの背広で決めた堅実な大蔵官僚タイプでした。
三和の流れをくむUFJが行動力を重んじる半面、三菱は石橋を叩いても渡らなかった。三菱が主導する合併で『組織の三菱』が自らの哲学を前面に押し出して、東京や三和、UFJを“三菱色”に染め上げたと言われます」
百貨店業界では、2008年に三越と伊勢丹が合併して「三越伊勢丹ホールディングス」が誕生したが、「老舗の三越とファッションの伊勢丹」と言われたという。
『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。
「三越は“自分の前にいるのが主”という意味で客のことを『前主』と呼んでいたと言いますが、合併後は伊勢丹の申し出で廃止されました。役員会議の際も三越の役員にはお付きの者が何人もいて、伊勢丹出身者を驚かせたそうです」