ドイツ銀行を含む欧州のユニバーサルバンクが、中国投資に傾斜し始めたのは、2012年頃からのようだ。当時、ギリシャの財政危機に影響でユーロ圏経済は低迷していた。欧州中央銀行(ECB)による健全性審査(ストレステスト)が終了した段階で、ユニバーサルバンクは中国に収益機会を求めたのである。
特にドイツは、メルケル首相が温家宝首相(当時)とトップ会合を繰り返し、航空機大手エアバスからの旅客機の大量購入や、ユーロ国債の継続的な購入の約束を取り付けている。ドイツの金融機関は、そうした国の意向を受けて、中国への投資を拡大していったとみられる。
だが、昨年から、風向きが変わり始めた。中国の金融当局が、経営基盤の弱い企業について、破綻を容認するスタンスに転換しつつあり、実際に破綻処理をされる企業が出てきている。その影響で、ユニバーサルバンクの対中投資の不良債権化が観測されている。
前述したオフショアリークス社の試算によると、ドイツ銀行のオフショア市場での残高約5兆円の内、16%程度が50%以上の確率で債務不履行(デフォルト)となる可能性があるという。つまり、8000億円相当の損失を出す恐れがあるのだ。
予測が現実となった場合、ドイツ銀行の2016年の最終損益は、同行が抱えるロンドンの銀行間取引市場(LIBOR)での不正操作や、マネーロンダリング関連の多数の訴訟費用および制裁金支払い負担が重なることにより、1兆円を超える純損失を計上する可能性があるという。
そして、この対中投資資産の不良債権化は、これまで伝えられている同行の膨大なデリバティブ投資の焦げ付きと同様か、それ以上の現実的な脅威として海外投資家に意識されつつある。
※マネーポスト2016年夏号