1皿100円の回転寿司の平均的な客単価は1000円程度と言われている。もちろんネタによって原価率は異なるため、店側は原価の高いネタと安いネタを組み合わせて利益を出す“粗利ミックス”という手法を駆使して儲けを出している。
飲食店経営に詳しい調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏がいう。
「鮮魚の赤身、白身、ボイルした加工品、巻物やマヨネーズを使ったネタなど、とくにファミリー層は幅広いネタを注文する。そのなかに原価率の高いネタと低いネタがうまく組み合わさっていて、客単価1000円以上なら利益がしっかり出る。
たとえば、それぞれ定価100円の『たまご』の原価は約15円で、『ツナサラダ』は原価約20円。一方、定価100円の『まぐろ赤身』の原価は約75円。このように、原価が高いものと安いものが回転寿司店では混在している。客側は原価率の高いネタを食べて満足度が高くなり、店側は原価率の低いネタも注文してもらうことで、儲けが出しやすい」
とくに「期間限定のキャンペーン商品」は採算度外視で提供されるため、客にとっては満足度が高いネタになるという。
「“カニ”や“フグ”などの高級食材を使ったフェアは狙い目。店側はスケールメリットを活かし相場より安く仕入れているものの、レギュラーメニューより原価率ははるかに高い。客側は旬のネタを安く食べられるわけです」(回転寿司評論家・米川伸生氏)
一方、白身魚のネタは、原価率は高くないものの店側にとってコストの高いネタだ。
「タイやハマチなどの白身魚は皮を引いた時点で鮮度が落ちてしまう。注文が入りレーンに流す直前に包丁を入れるため、人的コストのかかるネタとなる」(同前)
ファミリー層が多い郊外型店舗では、1日5回転が理想とされている。そのため、「ドリンク類の利益率は寿司ネタより高いものの、居酒屋代わりに使われて長居をされると回転率が落ちる。そこで、回転寿司のアルコール類は他の格安チェーンよりは高い水準に設定されている」(同前)という。
“回転寿司飲み”のコスパは決してよくないということだ。
※週刊ポスト2020年1月31日号