米中両国は1月15日、貿易協議を巡る部分合意の文章にサインした。これに先立ちアメリカは、2019年12月15日に予定した1560億ドル相当の中国からの輸入品に対する追加関税措置を見送り、昨年9月1日に発動した第4弾の一部である1110億ドル相当に対する追加関税率を15%から7.5%に引き下げた。
とはいえ、第1~3弾までの2500億ドル相当に対する税率25%の追加関税措置は据え置かれたままであり、中国側が要求する完全撤廃には程遠い状態だ。この点について、“中国にとって厳しい措置だ”といった見方もある。
しかし、実際はそうでもない。2019年の中国の輸出(ドルベース)は全体では0.5%増であった。これは2018年の9.9%増、2017年の7.9%増と比べると確かに低いが、2016年の▲7.7%減、2015年の▲2.9%減と比べると高い。構造的に輸出が急増する時代は過ぎている。0.5%増は異常に低いというわけではない。
また、人民元ベースでみると2019年の輸出は5.0%増であった。ドルベースよりも伸び率が大きいが人民元安効果が懲罰関税の影響を軽減させている。国、地域別でみるとアメリカ向けは▲8.7%減と確かに影響は大きいが、ベトナムは21.8%増、マレーシアは20.1%増で、アメリカ向けの86%の規模があるASEAN全体では17.8%増である。アメリカ向けよりも規模の大きなEU向けは9.6%増である。中国はアメリカに売れない分、ASEANやEUに販路を拡大している。もう一点付け加えておかなければならないのは、ASEAN向けの一部はアメリカに迂回輸出されている可能性が高いということである。
2019年の中国の輸入は人民元ベースでは1.6%増であった。アメリカからの輸入は▲17.1%減で影響は大きい。しかし、ASEAN、オセアニア、ラテンアメリカなどからの輸入増で補っている。加えて、中国の貿易構造は日本、韓国、台湾などの周辺工業国から原材料、部品などを輸入して、それを加工して輸出するといったいわゆる加工貿易に特徴があり、2019年時点でも、貿易全体に対して加工貿易が約4割を占める。輸出が増えなければ輸入も増えないといった関係があることも考慮する必要がある。