「子供がほしくないわけありません。でも、この手取りでどうやって育てていけるのか教えてほしいです」、「1人目の保育園に落ち続けて、預け先を求めてあちこち電話する毎日でした。2人目なんて考えられません」、「今だって旦那は家事の分担をしてくれない。子供が生まれたらワンオペ必至だから、産んだら私が地獄なのが目に見えている」──。
街中やSNSには、女性たちの悲痛な声があふれている。厚生労働省が昨年12月末に公表した「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」によると、2019年の出生数は86万4000人と90万人割れを記録。前年から5万4000人減少し、明治32(1899年)の統計開始以来、最も少なくなる見通しだ。
出生数から死亡数を差し引いた、日本の全人口の減少数は51万2000人で、これは人口55万人の鳥取県とほぼ同数となる。この事態に東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介さんは、インターネット報道(AbemaTV)で「中核市クラスの自治体がまるごと消えてなくなるイメージ。中期にわたる人口減少はほぼ避けられない」と警鐘を鳴らしている。このまま人口の減少が続けば、税収が減り、社会保障制度の崩壊の可能性すら囁かれている。
「少子化」は何となく知っていても、これほどの規模と速度で進んでいることに衝撃を受ける人も多いはずだ。
“90万人割れショック”について、厚労省の言うように「令和への改元まで結婚・出産を遅らせる動きがあった」のも一因だろう。だが、近年出生数は低下する一方。要因は、一時的なものとは思えない。