「だったら結婚しなくていい!」とは、1月22日の衆議院本会議で飛び出したヤジだ。
“幸せになれない結婚なんて無意味だ”ということではない。国民民主党の玉木雄一郎代表が「国難突破の少子化対策」として選択的夫婦別姓を提案した際、自民党席から“女性議員の声”がした。多くの女性国民が「仕事を続けられずに経済的に困窮するなら結婚しなくていい」と考えるなか、疑惑の女性議員がこう叫んだ意図は“夫と同じ姓を名乗って家庭に入るのが嫌なら、結婚なんかするな”としか受け取れない。
国を引っ張る立場の女性にすら、“男も女も働かなければ食えない”現状を理解できず、“結婚した女は家のために尽くすもの”という前時代的な思想が染みついている証拠だろう。このままでは、たとえ夫婦別姓が制度化されたところで、出生数はおろか、婚姻数も上がるわけがない。
女性の大学進学率・就業率が上がるなか、出産や子育てによって“失われる利益”は増す一方だ。
出産や子育てにかかるのは、食費や学費などの目に見える費用だけではない。出産や育児のための勤務時間の短縮や昇進の遅れ、退職を余儀なくされるなどで、本来手にするはずだった収入が得られなくなるリスクが上がる。
厚労省の賃金構造基本統計調査によると、男女雇用機会均等法が制定された1985年時点で男性の60%だった女性の賃金は、2018年に73%まで上昇。
男女の賃金格差が縮小するなか、高学歴でキャリアのある女性ほど、“子供がいなければ稼げるお金”が積み上がっていく。一方で、男性を含めてわが国の賃金増加は頭打ちの感がある。これでは、結婚や出産をためらう女性が増えるのは当然だろう。
女性が仕事を辞めると高卒で1億円、大卒で2億円の生涯賃金を失うとの試算もある。だからといって結婚や出産を諦めて仕事を選ばざるをえないのは健全な状況とはいえない。なによりも働きながら育児ができる環境が必要だ。
※女性セブン2020年2月13日号