自分ひとりが頑張らなくてもいいと気付くことが大切
日本の子育てもこのくらいの手抜きをしていいのでは──そう佐光さんに尋ねると、「その発想をやめるのがいちばん」とたしなめられた。
「そもそも“どう手抜きをすればいいか”という発想そのものが“本来はすべて手間暇かけてやるべきもの”という価値観の表れです。例えば食器洗いでも、欧米では食洗機が各家庭に備わっています。私がホームステイしたスウェーデンの共働き家庭では、一日に一度まとめて食洗機で洗い、洗いあがりもあまり細かくチェックしませんでした。日本では『きちんと洗う』ことが重要視されていますが、欧米では食洗機が当たり前なのです」
機械や外注に家事を頼ることは“手抜き”ではなく、“よりよい育児をするための手段”ととらえるべきだ。家庭において何より大切なのは、「自分を大切にすること」と佐光さんが強調する。
「母親自身が楽しく前向きに暮らせなければ、家族に前向きに接することなんてできません。母親も家族の一員。ほかの家族が幸せに過ごすためにも、自分ひとりが頑張らなくていいんだと気づくことがとても大切です。まずは自分自身がハッピーになれないことや、負担が大きいことをストップしてみて。外注したり家族にヘルプを求めてみてほしい」
つらい感情をひとりでためこまず、誰かと共有するだけでも助けになると、佐光さんは続ける。
「SNSで『育児のための三種の神器』という話題が流行した際、最も多く挙げられていたのは『ツイッター』でした。確かに家事や育児の大変さを誰かとシェアして共感し合うのに、SNSは適しています。でも、できればネットの前に、まずはリアルな夫婦や家族でシェアしたいですね」