30代の男性会社員・Bさんはそれほど音質を求めないうえに、オーディオ機器はコストとスペース面でコスパがよくないと考えている。
「オーディオは本格的にそろえると余裕で10万円くらいはするし、正直、今の部屋には置くスペースもない。一人暮らしには贅沢すぎるような気がします。中途半端にスピーカーを買っても、基本は一人で音楽を聴くだけなので無駄になりそう。それなら端末単体で音を鳴らせば十分だと思います」
Bさんは、自身のスタンスについて、使用端末の遍歴が影響しているのかもしれないと話す。
「中高生時代にMD、大学時代にiPod、社会人からiPhoneに音楽を入れて、最近はサブスク(定額制音楽サービス)とYouTubeです。昔は家にCD・MDコンポがあって、iPodを使うようになって以降もたまに外部接続でつないだりしていましたが、今はもう完全にiPhoneだけで完結していて、イヤフォンで聞いています。音質にこだわる人もいるとは思いますが、昔から圧縮などで“劣化”した音質を聴いてきた私には、あえてスピーカーにする必要はないのかなと思います」(Bさん)
20代の女性会社員・Cさんは隣人から苦情があったため、スピーカーからイヤフォンに切り替えた経験があるという。
「防水仕様のBluetooth対応のスピーカーで、料理中に好きな音楽を聴いたり、シャワー中にドラマCDを聴いたりしていたら、隣の人から苦情がきてしまって……。それ以来怖くて、スピーカーでは聴いていません。大きな音で聴いていた私が悪いのですが、少し古めの木造アパートなので、もともと防音が微妙。防音がしっかりした部屋に引っ越す経済力もないですし、今はワイヤレスの完全防水イヤフォンにして満足しています。テレビも、友人が来たとき以外は基本的にイヤフォンです」
誰にも邪魔されない“自分だけの空間”を心ゆくまで楽しみたい人たちは昔もいたはずだが、その“空間”がどんどん狭くなっているのかもしれない。