一方で指摘されるのが「交通の不便さ」だ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「東京のマンションの資産価値は、『最寄り駅まで徒歩何分か』というロケーションで決まります。晴海フラッグは、都営大江戸線勝どき駅まで徒歩で17~20分程度かかるアクセスの悪さがネックとなり、資産価値の上昇は見込めません」
“陸の孤島”というハンデを克服するため、晴海フラッグと新橋、虎ノ門を専用レーンで結ぶ「バス高速輸送システム(BRT)」が五輪期間中から試験的に導入される。
朝のラッシュ時は1時間あたり12便の運行が予定されるが、実際に運行が開始されるまで利便性は未知数だ。
「2万人近くの住民が密集する住宅地なので、2両編成で1両に30~40人しか乗れないBRTでは輸送量が足りないと考えられます。他の再開発エリアのように、BRTのほかにシャトルバスを運行したとしても、アクセスの不便さは拭えないのではないか」(榊氏)
埼玉に住むよりは…
判断基準は購入目的によっても異なる。前出・榊氏は「投資目的なら見送り」と指摘する。
「中古マンションは、『駅から徒歩10分圏内かどうか』が生命線です。今は五輪で持て囃されているが、五輪が終わって2~3年もすれば普通の施設になり、10~15年すれば売りに出しても買い手がつきにくくなると見ています」
購入者にとっては「有名選手が過ごした部屋に住める」可能性も魅力に映るが、資産価値の上昇に寄与しないのか。
「選手村の宿泊棟は、構造の枠組み以外はすべて取り壊して、ファミリー用の間取りの部屋を作り直します。メダリストの部屋がそのまま残され、記念品などが贈呈されるならともかく、原型をとどめないので資産的なプレミアはつかないはずです」(榊氏)