住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「雑司が谷」(東京都豊島区)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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都内には、住んでいるだけでステータスになるような街がいくつもありますが、もう少し大きな枠組みで「山手線の内側に住んでいること」もステータスの1つ。色々な解釈はありますが、山手線の内側に住んでいれば、「都心在住」を名乗っても良いでしょう。今回取り上げる「雑司が谷」も、山手線の内側の街の1つ。知名度は今ひとつかもしれませんが、その実力は本物です。
鉄道は長らくありませんでしたが、東京メトロ副都心線が2008年に開業。都電荒川線の鬼子母神前停留場も接続しています。副都心線で池袋まで2分、新宿三丁目まで6分、渋谷まで13分と、鉄道の便は申し分ない上、目白(JR山手線)、東池袋(東京メトロ有楽町線)へもラクラク徒歩圏内。池袋から歩いても15分程度なので、散歩がてらプラプラ歩いていくのもアリでしょう。
道路状況もボチボチです。駅のすぐそばを南北方向に山手通りが通っており、東西方向には目白通りが通っていて、東西南北とも移動は問題なし。日本女子大学の横を抜ければ、首都高速の護国寺出入り口があり、高速道路へのアクセスも悪くありません。ただし裏道は狭い上に入り組んでいて、大きな車だと通り抜けられないような場所がゴロゴロあります。また、移動の中心となる山手通りは日常的に渋滞しているので、その点は予めご承知を。
こんなに便利なのに家賃は安い
住む街としての雑司が谷の実力を示すデータとして、家賃の安さがあります。山手線の内側の駅の家賃相場を調べてみると(ワンルーム・1K・1DK。2月5日時点ライフルホームズ調べ)、雑司が谷(8.57万円)より安いのは、千駄木(8.36万円。東京メトロ千代田線)、本駒込(8.54万円。東京メトロ南北線)、東大前(8.04万円。同)、白山(8.28万円。都営三田線)の4駅のみ。これら4駅はいずれも家賃相場が比較的安い東側にあり、西側でこの安さは圧倒的です。
駅前に大きなスーパーはなく、その点は少々不満ですが、少し歩けばスーパーは何店かありますし、先述の通り、目白や池袋へは徒歩圏内です。学生が多く住んでいるため、コンビニは非常に多くあり、昔ながらの個人商店も健在です。