現在、年金の受給開始年齢は原則65才だが、実は「前倒し」して受け取れる制度がある。60~64才の間に受け取る「繰り上げ受給」というもので、逆に「先送り」して66~70才の間に受け取る「繰り下げ受給」も選択できる。
前者の「繰り上げ受給」は、早く受け取る代わりに受給額が減る。具体的には、1か月早めるごとに0.5%、1年で6%減額される。5年早めて60才から受け取るようにすると、受給額は30%減る。
一方「繰り下げ受給」は、1か月遅らせるごとに0.7%、1年で8.4%増えるので、70才から受け取ると42%増えることになる。
一見すると、後者の「繰り下げ受給」を選んで年金額を増やした方がお得に見えるし、政府もそれを推奨している。しかし実際には、「制度がコロコロ変わるから、いつ減らされるかわからない」という年金不信や、「そんなに長生きできない。死んだら丸損だ」と思う人も少なくないので、前倒しの「繰り上げ受給」を選ぶ人は、先送りする人の約20倍も多い。「年金博士」こと、ブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾さんが話す。
「年金制度は複雑だし、手続きも煩雑なので、つい“国が奨めるように受け取ればいいや”と考える人も多いかもしれません。しかし、国が最優先しているのは、“年金をできるだけ国民に支払わないようにして、年金財政をラクにしよう”ということです。
大切なのは、国民一人ひとりが年金の正しい知識を学んで、それぞれの生活や人生プランに合った受け取り方をすること。そう考えると、多くの場合、『前倒し』で受け取った方が得するのです」