いつから、どれぐらい前倒しで受け取りたいか
さて、いざ実際に前倒しで受け取るなら、夫婦の働き方や人生設計に合った“賢い戦略”を立てる必要がある。
繰り上げ受給は、「1か月単位」で選べるので、たとえば「64才11か月から」受給することもできるし、「63才6か月から」でも「60才から」でも設定できる。
「仕事をリタイアする時期に合わせてもいいし、急病で倒れて働けなくなった時点で受け取り始めてもいい。“親の介護のための費用が必要になった”などの事情で、受給のタイミングを見計らってもいいでしょう」
さらに、夫婦世帯ならば、「夫の年金」と「妻の年金」に分けて考える必要もある。別掲の模式図を見ていただきたい。「40年間サラリーマンをした夫と専業主婦の妻」という標準的な世帯をモデルにして、【1】夫婦一緒に繰り上げ、【2】妻だけ繰り上げ、【3】夫だけ繰り上げ、の3つのパターンのイメージをまとめた(わかりやすくするために、繰り上げ受給の開始時期は「60才」に統一)。
「繰り上げ受給を選んだ場合、“年金の一部の金額だけ繰り上げる”ということはできません。年金は全額、前倒しで受け取ることになり、途中でやめることもできないので、慎重に検討してください。
“月々数万円の生活費や遊興費のプラスが欲しい”という場合は、パターン【2】の『妻だけ』、月10万円ほどのプラスが欲しければパターン3の『夫だけ』がいいでしょう」
このように、そもそも夫婦でいくら受け取れるのかをまず把握し、いつから、どれぐらい前倒しで受け取りたいかを検討し、細かく“オーダーメード”していけばいいということだ。
※女性セブン2020年3月5日号