ところが、である。保険会社から「保障の対象外です」と告げられてしまったのだ。
実は、一口に「がん」といっても、がん細胞が上皮(臓器の粘膜や皮膚)にとどまる「上皮内がん」と、その奥までがん細胞が浸潤した、「悪性新生物」がある。
国立がん研究センターの調査(2014年)では、全部位の10.1%が上皮内がんとされ、大腸では22.4%、子宮頚部では64.7%にも及ぶ。しかし、がん保険商品によっては、上皮内がんが保障の対象外であったり、支払い回数が制限されたりするものがあるのだ。
「近年は上皮内がんまで保障対象とする商品が増えていますが、Aさんのように古いタイプに加入したままだと、カバーされないことが少なくないと考えられます」(ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢氏)
上皮内がんの場合、必ずしも高額な治療費がかかるわけではないが、いざ発見された時に対象外と告げられるショックは大きいので、「長く同じがん保険に入っている人は、保障範囲を確認しておいたほうがいい」(同前)といえる。
「通院だけ」だともらえない
厚生労働省の「患者調査」(2017年)では、かつて30日以上かかっていたがん(悪性新生物)患者の平均入院日数が17.1日に短期化。医師も患者も、より負担の小さい通院治療を志向する流れにあるが、ここに落とし穴がある。ファイナンシャルプランナーの福島えみ子氏の指摘だ。
「20年も30年も前の古いタイプのがん保険では、入院と手術の保障だけが対象のものが珍しくない。今のがん治療は抗がん剤や放射線、ホルモン治療などの通院治療が増えていますが、医療の変化に商品が対応していないわけです」
数十年にわたって加入していれば、保険料は100万円超になることも珍しくないが、「通院中心で治すと、ほとんど保障を受けられないケースがある」(同前)のだ。働き盛りの20~30年前にがん保険に加入してそのままにしている人たちが、がん罹患率が上昇する年齢に差し掛かり、こうしたケースが急激に増えると懸念されているのだ。
※週刊ポスト2020年3月13日号