合意がない場合、通行による日常生活の便宜を法的に保護される人格上の権利と考え、その妨害の排除を裁判上求めることも検討できますが、所有権の行使を違法な行為といえるか疑問です。遠回りは不便ですが、他人の土地を使った近道が使用できなくなった、と諦めるしかないようです。
ただし、市の買い上げ申し出からは、当該通路の公共的必要性が高いことがうかがえます。憲法上「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いる」ことができます。行政は議会の議決を経て、道路の路線を認定し、道路敷地の買い上げに応じない土地所有者から、公正な補償を行なって土地を収用し、誰もが堂々と歩ける道路を完成すべきだと思います。時間はかかりますが、これが王道でしょう。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年3月13日号