新型コロナウイルスの感染拡大で、足元の中国景気は大きく減速している。中国国家統計局、中国物流購買連合会が2月29日に発表した2月のPMIは、製造業、非製造業ともに大幅に悪化している。
製造業は前月と比べ14.3ポイント低い35.7ポイント、非製造業は24.5ポイント低い29.6ポイントとなった。ちなみにこれは、50ポイントを下回れば前月との比較において景気が縮小したことを示す指数である。製造業について13の細目指数があるが、50ポイントを超えたのは主要原材料購買価格だけであった。
参考までに、製造業PMIを構成する5つの細目指数について、2月の値と前月との差を以下に示しておくと、生産27.8ポイント(▲23.5ポイント)、新規受注29.3ポイント(▲22.1ポイント)、原材料在庫33.9ポイント(▲13.2ポイント)、就業人員31.8ポイント(▲15.7ポイント)、サプライヤー配送時間32.1ポイント(▲17.8ポイント)。それぞれの指数について傾向を説明するまでもない。生産活動が半分停止したような状態だ。
中国共産党は1月中旬以降、トップダウンで新型ウイルス肺炎の感染拡大を全力で抑えようと様々な政策を打ち出している。春節休暇は当初、1月24日から1月30日までであったが、2月2日まで延長した。さらに、各地方政府を通じて、生産活動の再開を2月10日まで引き延ばすとともに、その後の生産再開時期についても、疫病コントロールに関する産業、エネルギー、交通物流、都市サービス、医療関連、食品などの生活必需品、飼料、卸売・小売などを優先させたり、感染拡大の濃淡によって差をつけたりするなど、業種を問わず一斉に再開させたわけではない。
中国本土の新型コロナウイルス感染による累計患者数は8万人程度でありこの内8割以上が湖北省である。物理的に労働者が動けずに生産が支障をきたしているわけではなく、共産党が生産活動をコントロールしているから、景気は減速したと考えられる。
そうである以上、今後の景気の見通しは、当局がどの程度生産活動を抑制するのかという点にかかっており、具体的には製造業の再開率が重要な指標となりそうだ。
この点について中国国家統計局は、2月25日現在、調査対象となる製造業3000社、非製造業4000社の内、大中型企業の再開率は78.9%、大中型製造業に限れば85.6%に達していると発表している。今回の2月のデータは、2月中旬の状況を反映しており、その時点と比べれば、足元での生産再開は大きく進んでいるとみられる。