2019年の日経平均株価は、大発会(1月4日)の終値1万9561円から大納会まで約4000円上昇した。全体相場は堅調な上昇を見せたが、その中でIPO(新規上場)市場はどうだったのか。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長・西堀敬氏が、豊富なデータをもとに2019年のIPO市場を振り返り、最新トレンドを読み解く。
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2019年の全IPO件数は86件となった。2017年と2018年がともに90件だったのに対し、IPO件数はわずかに減少した。
2019年にIPOした銘柄のパフォーマンスを見ると、全86銘柄で上場後についた初値が公開価格を上回れば「勝ち」、下回れば「負け」、同値なら「分け」という基準での勝率を挙げると、76勝9敗1分けで88.37%となった。2017年の勝率は90%、2018年は88.88%だったので、ほぼ同水準だったといえるだろう。
また、初値が公開価格に対して何%上場したかという「初値騰落率」の全86銘柄の平均値はプラス75%となった。2017年の平均初値騰落率はプラス112%、2018年はプラス106%といずれも2倍を超えていたことに比べると、パフォーマンスは低くなった。
2019年にIPOした全86銘柄の中で初値騰落率が高かったトップ3を挙げると、1位は12月17日に上場したウィルズ(東証マザーズ・4482)。公開価格960円に対して4535円の初値をつけ、初値騰落率はプラス372%と4倍を超えた。2位はサーバーワークス(東証マザーズ・4434)のプラス276%、3位はAI inside(東証マザーズ・4488)のプラス250%だった。
これらのパフォーマンスを、過去のIPO銘柄と比較するとどうか。2017年にIPOした銘柄のなかで初値騰落率が高かったトップ3は、1位がトレードワークス(東証JQS・3997)のプラス518%、2位がウォンテッドリー(東証マザーズ・3991)のプラス401%、3位がビーブレイクシステムズ(東証マザーズ・3986)のプラス361%。同様に、2018年のトップ3は、1位がHEROZ(東証マザーズ・4382)のプラス989%、2位がビープラッツ(東証マザーズ・4381)の355%、3位が現在は東証1部に市場変更を果たしているRPAホールディングスの300%となっている。
こうした比較データから見ると、2019年のIPO市場は初値騰落率の水準に陰りが見えて以前より大きく儲かりにくくなっているとも考えられるが、勝率は相変わらず高いパフォーマンスとなっており、今後もこの傾向は続くと予想している。つまり、ほとんどのIPO銘柄においてブックビルディングに参加して公開価格で株式を入手できれば、初値がついた時点で利益が出る可能性が高いといえるだろう。
■西堀敬:投資情報サイト「東京IPO」編集長などを経て、現在は「IPOジャパン」編集長(https://ipojp.com/)。IR説明会、セミナーなども多数行なう。著書に『改定版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』など。