病床でせき込みながら、金子さんは葬儀の進行や棺、会葬礼状などを次々に指示した。「イベントはおいしい料理があれば印象がよくなる」と力説し、通夜ぶるまいの料理には特にこだわっていたという。
一方で、すべてを細部まで固めるのではなく、大筋を決めたら、後は稚子さんや担当者に任せたのも金子さん流だった。
「夫は、『もし迷うことがあったら、松竹梅の真ん中の“竹”にしてください』と常々話していました。そのおかげで、霊柩車は真ん中のクラスにするなど、夫が生前に指示していなかった事柄もスムーズに決定できました。迷いがないと、お葬式の準備がこんなに楽になるとは知りませんでした」(稚子さん)
エンディングノートを書いている人でも、葬儀の段取りをしている人は少ないという。一方で、冬場の葬儀にもかかわらず「あじさいを棺に入れてほしい」といった要望が残されるケースもある。いずれも遺族にとっては大きな負担になるため、希望は伝えても遺族が判断できる余地も残すようにしたい。金子さんプロデュースの葬儀には1300人が参列した。
「あまりにたくさんのかたが参列してくれたので、出棺が遅れ、火葬場で予定していたものとは違う立派な火葬炉を利用することになりました。そのための割り増し費用が唯一、夫の遺志に反するものになりました(笑い)」(稚子さん)
夫の葬儀は「お別れの式」ではなく、大勢の人に愛されていることを確認できた「ありがたい場だった」という。
素敵なお葬式を実現するためには、亡くなってからでは遅い。有名人たちの実体験を参考にしながら、家族や自分自身の“最後のイベント”に向き合ってほしい。
※女性セブン2020年3月19日号