65歳定年制の導入は徐々に進んでいるとはいえ、まだ企業の10%程度。その中で建設業は22%が導入に踏み切っている。
F氏の“贅沢な後悔”は、転職先を探している別業界のシニアにとってチャンスのありかを示しているともいえる。シニアライフアドバイザーの松本すみ子氏がいう。
「シニアが転職で成功するのはなかなか難しい。自分が働いてきた業界内で再就職先を見つけようとするからです。人材が余っている業界では、よほど特別のスキルを持った人でなければ必要とされない。それより、いま人手不足で、シニアを必要としている業界にもっと目を向けてもいい。60歳をすぎてから異業種に飛び込むのは不安でしょうが、よく探せば、自分のキャリアがそのまま通じる、職務の内容はほとんど変わらない仕事はかなりあります」
雇用延長後に自らの価値を高く売れるかどうかは、失敗した人の教訓に学べるかにかかっているのである。
※週刊ポスト2020年3月27日号