「“自粛”を“要請”」とはなんなのか?
それではロフトグループ副社長・前川誠氏にうかがった話を紹介しましょう。
――ライブハウスは今、どのぐらいのダメージを受けているのか。ロフトグループでどれだけの売り上げが吹っ飛んだのか。無観客の割合はどれくらいか? 中止・延期は何割ぐらいか。
前川:店舗にもよりますが、中止・延期になったイベントは3月だけで3~4割です。3~4月の弊社全体での機会損失額は現時点で約7000万円と見積もっていますが、この状況が長引けば更に増えることが予想されます。インターネット配信を利用した無観客ライブは急遽スタートしたこともあり、直営店10店舗での開催を合わせてもまだ20本弱しか開催できておりません。
――ネット配信で売り上げは補填できているか?
前川:ありがたいことに有料配信のお申し出を少しずつ頂くようになって来ていまして、売り上げも通常のイベント以上に上がるものもあります。ただ、そもそも本数が少ないこともあり、各店の家賃など固定費を考慮すると、まだまだ厳しい状況です。この状況が長引くことも予想されますので、インフラ整備や人材育成を急ピッチで進め、少しでも多くの配信が可能になるよう環境を整えている最中です。
――今、訴えたいことを教えてください。
前川:とにかく安倍首相が記者会見のたびに感染機会のある場所として「ライブハウス」と「スポーツジム」だけを名指しするのがどうしても理解できませんし、それに追随したテレビなどのメディアが、まるでライブハウスがウイルスの巣窟のような扱いをしているのが、とても悔しいです。
我々は現在、体調不良の方の来店禁止や消毒用アルコールの設置、店員のマスク着用、店内の定期的な換気などできる限り感染機会を減らす努力をして営業しています。もしこれでも問題というのであれば、ライブハウスだけではなく全国の「不特定多数の集まる場所」を一定期間閉鎖するなどの措置が必要になるのではないでしょうか。
にもかかわらずそういった規制を一切せず、ただ「自粛」を求める政府の姿勢には強い憤りを感じます。あと、それに無批判に乗ってしまうメディアに対しても怒りを感じます。というか「“自粛”を“要請”」するって、どういうことなんですかね?
要請に応えてイベントを取りやめたところで、それはあくまで「自粛」なんだから勝手にやったことでしょ? ありがとね! で終わらせるつもりなのでしょうか。何の補償もなく……? 昨今の自己責任論に裏打ちされている気がして、非常に嫌らしい言葉だなと思います。
そんな憤りとは別に、現在Twitterなどでライブハウスを救おうというご意見を目にすることが増えました。また、出演者の皆様からも有料配信へのご協力のお申し出をいただくなど、この苦境だからこそ皆様の温かさを感じています。「地下の閉鎖空間」ではありますが、それでも文化の担い手としての誇りを失わず、ありとあらゆる手段を使ってでも状況が正常化するまで生き延びたいと思います。