新型コロナウイルスの影響により、各所の病院で「休診」となる事態も相次いでいる。こうした“通院危機”が深刻なのは、高血圧や糖尿病など、生活習慣病をはじめとする持病の治療に「薬」が必要だからだろう。歳を重ねるほどに処方される薬は増え、5種類や6種類となることもあり、「薬代」の出費は家計にも大きく影響する。その「薬の値段」が4月1日から大きく変わる。
厚生労働省は3月5日、官報に新たな「薬価基準」を告示した。これを受けて、4月1日からは約1万4000の医療用医薬品の値段が平均4.38%、引き下げられることになる。銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏が解説する。
「医師が処方する医薬品の価格はすべて国が定めていて、原則として2年に一度、価格の見直しが行なわれます(2021年度からは毎年改定)。医薬品は製薬会社から卸業者を通じて、医療機関や薬局に販売される。患者に処方される際の価格は国が定めていますが、医療機関が卸業者から購入する際の価格は自由競争。そこでの市場実勢価格を参考に改定が行なわれ、基本的には薬価が少しずつ引き下げられていく方向にあります」
表は高血圧や痛風、糖尿病などの治療薬で、60代以上の男性に処方量の多い薬について、4月1日からの値下がり幅をまとめたものだ。一見して分かるように、値下げ幅が1%に届かないものもあれば、10%以上の大幅値下げもあり、薬ごとの違いが大きい。
「薬価改定にはいくつかのルールがあり、そのひとつに『市場拡大再算定』というものがあります。事前の予測を大きく上回る売り上げを出した薬は、値下げ幅が大きくなるのです。国からすれば“たくさん売れているから単価を下げても製薬会社は利益を出せるでしょ”という意味合いになる。
たとえば今回の改定では、痛風治療薬の『フェブリク』がそれにあたります。日本では2011年に承認された薬で、痛風治療薬としてはトップシェアを誇ります。全体の平均値下げ幅が約4%のところ、約14.5%という大幅な値下げとなりました。処方される量や期間にもよりますが、薬代が年間数千円、圧縮できる人も出てくるでしょう」(長澤氏)