3連休直前の3月19日、大阪府の吉村洋文・知事が「大阪・兵庫間の不要不急の往来を控えてほしい」と自粛を訴えたことが、新型コロナ対策とは別の意味で波紋を広げている。
これを受けて、井戸敏三・兵庫県知事も記者会見で大阪など他の地域との往来自粛を求める方針を打ち出して、こう付け加えた。
「大阪府からは事前の調整はなく、向こうが勝手に発表した。大阪はいつも大げさ。過激な発言をして、責任は取らない」
大阪側が兵庫を名指ししたことで、「大阪も言ってるので、あえて“大阪”を入れた」とも明かした。
感情的な応酬にまるで“国境封鎖”のように見えるが、実際には3連休中も、大阪と神戸の間はJR、阪急、阪神の3本の鉄道が並行して走り、阪神高速や名神高速でもつながっていた。
大阪府(人口約880万人)と兵庫県(同約550万人)の往来は活発で、2015年の国勢調査によると、大阪府から他県への通勤・通学者(流入人口)では兵庫県が約11万人で最も多く、兵庫県から大阪府に来る流入人口も33万人で最も多い。
往来は活発なのだが、両知事がバトルを繰り広げたことで、大阪と兵庫の間にある深い溝が浮き彫りになった。両府県の対立関係について、元読売新聞大阪本社の社会部記者で、ジャーナリストの大谷昭宏氏はこう語る。
「関東は東京一強ですが、関西では大阪、神戸がそれぞれ自分のところが一番だと思っている。大阪は天下の台所で関西経済を支えているという自負があり、神戸は港町で早くから異文化を取り入れて開かれた街で、それぞれプライドが高く、バチバチやっている。だから、神戸は『大阪が来るなとは何事や』となり、大阪は『お前らに来てほしないわ』と言い返すことになる。鼻っ柱が強いんです」