新型コロナ対策での往来自粛要請を端緒に勃発した大阪・兵庫の両知事によるバトル。吉村洋文・大阪府知事が「大阪・兵庫間の不要不急の往来を控えてほしい」と訴えたことを受けて、井戸敏三・兵庫県知事が「大阪はいつも大げさ」と名指しで批判するなどしたが、不思議なのは当時、双方に隣接する「京都」については、特段触れなかったことだ(後に京都府知事が阪神圏の往来自粛を要請した)。
感染者数を見ると、京都は大阪・兵庫と比べて少ないから、という事情もあるだろうが、それ以外にも地域に根付いた感情的な問題があるのかもしれない。元読売新聞大阪本社の社会部記者でジャーナリストの大谷昭宏氏は言う。
「京都とケンカしても勝てないと思っているのでしょう。昔から“白足袋族とは絶対に喧嘩をするな”と言われている。長い歴史のなかで日本を裏から牛耳ってきた僧侶、茶道や華道の家元、花街の女将さんや芸舞妓には逆らわない。大阪も神戸も、京都とは面と向かっては喧嘩しないんです。大阪、神戸、京都が関西の“三都物語”といわれますが、それぞれに腹の底ではいがみあっているんです」
ベストセラー『京都ぎらい』の著者である国際日本文化研究センター教授の井上章一氏は、こう分析する。
「僕の実感では日本で一番京都のことをボロカスいうのは大阪です。昔は大阪にも京都にもおっさんのスケベ心を満たす女遊びの場がありました。それが1970年代、1980年代にメディアが“京都は雅だ”と、すかした文化をもてはやして女性にPRしてイメージが浄化された。一方の大阪はおっさんのエロの街というイメージ付けがされた。これが大阪人は気に食わない」