【ケース2】「これが効く」という言葉に流されてしまう
医学の発達により、さまざまな治療法が開発されている。その一方、治療における最終的な選択肢は患者に任されている。島根大学医学部臨床研究センターの大野智さんはこう語る。
「医師は患者に治療法の説明をし、同意を得てから実施します(=インフォームドコンセント)。たとえば、『この病気には薬物療法、手術、放射線治療があって、それぞれの内容はこうです』と説明した後、『どうしますか?』と患者に聞くのですが、選択肢が多いと人は迷ってしまいます。
アメリカの心理学者、バリー・シュワルツが、『選択肢が増えることにより、人は選べなくなり、無力感を抱き、仮に決断をしても、その選択がよかったのか、選ぶ数が多いほど満足度が下がってしまう』という説を唱えています。たとえば、スーパーマーケットで24種類のジャムを陳列した場合と6種類のジャムを陳列した場合では、後者の方が売れ行きがよかったという実験結果があります。
人はもともと多くの選択肢から1つを選ぶことに、負担を感じるのかもしれません。ですので、『この治療法がいい』と断言されると、『これがいいのか』とつい頼ってしまうのは、そうした心理による可能性があります」(大野さん・以下同)
【ケース3】同年代や同じ境遇の人の体験が自分にもあてはまると信じる
病気になった人が「○○をのんだら症状が改善された」などと体験談を披露している医療サイトもある。こうした情報にも人は踊らされやすい。
「『このサプリメントをのんで、膝の痛みが治りました』といった体験談を見かけたりしますが、たまたまその人に合っていただけかもしれませんし、症状の改善はサプリメントによるものでなく、実は同時期にのんでいた処方薬によるものかもしれません。ですから、自分と同年代の人が効果を実感しているというようなキャッチコピーをそのまま信じてしまうのは考えものです」
こうした例は、「ステージ4でも、食事だけでがんが治った」などのように、症状が深刻になればなるほど、人は飛びついて信じ込んでしまう傾向があるという。
※女性セブン2020年4月16日号