新型コロナウイルス感染拡大の影響が各所に及んでいるが、日本の最高学府である大学も例外ではない。全国各地の大学では講義開始日の延期にくわえ、オンライン講義を検討している。文部科学省が発表した「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」(2020年3月24日付)では、「テレビ会議システムを用いた遠隔授業」や「オンライン教材を用いた遠隔授業」についても触れられている。
実際、東京大学では4月以降に開講する授業を当面のあいだオンライン講義でのみ開講すると発表しているが、オンライン講義を実施するにあたって越えなければならないハードルは少なくない。急遽、オンライン講義が導入されることとなった現場では、どのような問題に直面しているのか。地方の私立大学で教員をしているA氏(40代男性)は、こう語る。
「3月から日々会議の連続です。集まるのはよくないとは分かりつつ、教授会や学部でのミーティングなどが続いています。もっとも議論の焦点となっているのがオンライン講義の進め方です。私が勤務する大学では、学生のパソコン保有率が実家暮らしの人で50%ほど、一人暮らしの学生はさらに低い状況です。また学生の多くがスマートフォンを保有していますが、自宅にWi-Fi環境が整っていない学生も多いため、容量の大きなデータのやり取りが困難な状況です。
なかには月額2GBや5GBのスマホ契約をしている学生もいるわけですから、ウェブ会議アプリの『ZOOM』や『Skype』、『Googleハングアウト』などを導入すると、すぐに彼らのスマホは通信制限がかかってしまいます。同様の理由で、教員がYouTubeなどにアップした講義動画の視聴を促すことも難しい」(A氏)
このような、学生の“ギガ不足”問題が、オンライン講義の大きなネックになっているという。A氏は続ける。
「我が校は動画を使った講義が厳しいということで、基本的には50MB以内のPDF資料を配布し、自宅学習を促すという方向となりました。ただし語学授業の場合、グループワークやスピーキングの時間が単位認定要件となることが多く、講義の到達目標を達成できないのではないかとの危惧もあります」(A氏)