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娘が大学入学した40代男性の落胆 「親から受けた恩は子に返せ」の難しさ

 国税庁の民間給与実態統計調査では、平成30年分の平均給与は441万円。Sさん夫婦の年収を合わせれば、それを上回る。だが、Sさんは子供を大学に通わせるに際し、大きな壁に突き当たったという。

「子供が大学進学志望なのは分かっていたので、貯金を心がけていましたが、進学塾、受験料、受験の交通費や宿泊費、入学金などでどんどんお金が吹っ飛び、あっという間に心許なくなりました。仕方ないので、娘には『都会の一人暮らしは心配だから』と言って、一人暮らしよりも安く済む女子寮に入れました。1か月約5万円の寮費は私が払っていますが、生活費として渡すのは3万円で、残りはバイトで稼ぐように言いました」

 上述の「私立大学新入生の家計負担調査」によると、2018年度の仕送り額の平均は8万3100円。Sさんの仕送り額は約8万円なので、これまた平均レベルだが、ここでSさんの頭をよぎったのは、Sさんが両親からたびたび言われてきた言葉だ。

「20代半ばで地元に帰った私が、手土産を携えて実家に顔を出すと、父親は『こんなことはしなくていいから、子供に何か買ってあげなさい』と、いつも言っていました。親孝行のつもりでしたが、両親の思いは『親から受けた恩は子に返せ』というものだったのです。

 けれども、どうやら私にはそれができそうもありません。私の大学時代のバイト代は遊ぶ為のお金でしたが、娘のバイト代は生活費。私は気ままな一人暮らしでしたが、娘は寮生活です。そう考えると自分が情けない。

 泣き言になりますが、結局世の中が“貧乏”になっているんですよ。ウチの父は高卒で、名もない中小企業の社員でしたが、子供を大学に入れ、奨学金も受けずに卒業させることができました。けれども今の時代、40代で月12万の仕送りが出来るのは、ほんの一握りのハイスペックな人だけでは……」

 こう嘆くSさんだが、救いがあるとすれば、娘が何一つ文句を言っていないこと。これだけでも十分子育てに成功したようにも思われるが、“親から受けた恩を子に返す”のが非常に難しい時代になっていることは間違いないようだ。

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