新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済失速への対策として、日本政府は1人につき10万円の特別定額給付金をはじめとする緊急経済政策を打ち出している。しかし、経済アナリストの森永卓郎氏は、「それはあくまで対症療法でしかない」と語る。今、日本経済を回復させるために必要な救済策は何か。森永氏が解説する。
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政府が打ち出している現金給付や中小企業向けの無担保融資などは、コロナ・ショックに対する緊急対応措置としては確かに重要だろう。活動自粛要請などによって収入が激減し、家賃やローンの支払いにも窮している人が多いのだから、シンプルな方法で迅速に行なう必要がある。
とはいえ、現金給付や緊急融資などは、いわば止血剤のようなものだ。では、最も効果が上がる景気対策は何かといったら、やはり消費税減税、一時的にせよ消費税をゼロにすることだ。現金給付などで当座をしのいだとしても、需要を回復させなければ景気は戻らないからだ。
改めて指摘すべきは、今回の景気後退は2019年10月の消費増税によって始まったという事実である。消費税率が8%から10%に引き上げられたために消費が失速し、2019年10~12月期のGDPは年率で7.1%も減少した。しかし、そこには新型コロナウイルスの影響はまったく入っていないのだ。消費増税が消費を失速させたのだから、消費税をゼロにすれば、消費が戻るのは火を見るより明らかだろう。
ところが、政府や御用学者たちは、この期に及んでも消費税減税に否定的なのだ。消費税は社会保障の財源であり、税率変更には手間も時間もかかる、というのが彼らの言い分だ。
しかし、消費税をゼロにする財源は、すべて赤字国債で賄えばいいのだ。その国債をすべて日銀が買い取れば、市中への資金供給が増え、金融緩和にもつながる。現にコロナ対策で決まった25兆円の補正予算の財源はすべて赤字国債で賄われ、日銀は無制限に国債を買い取ることを表明しているから、これはいま政府がやっている施策と事実上同じだ。また、消費税をゼロにしてしまえば、単にすべての品目を税抜き価格で売るようにすればよいから、レジなどのシステム変更は最小限で済むはずだ。