新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くの店舗が休業を余儀なくされたが、生活必需品が買えるスーパーマーケットは休業要請の対象外。スーパーの従事者は感染リスクに晒されているが、「危険手当」を求めることはできないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
妻はスーパーマーケットで働いています。コロナ感染拡大を受けても、スーパーは営業しなければならず、パート勤務の妻にも出勤を求めています。正直なところ、感染の恐れもあって、妻は出勤を嫌がっており、この状況を踏まえ、スーパーに対して「危険手当」のようなものを求めてもよいですか。
【回答】
危険手当検討の前に、そもそも感染の危険があるのにもかかわらず、労働者に出勤の義務があるのかが、まずは問題となります。労働者は本来の労務で、予想されていない危険な業務の就労を断わることができます。新型コロナウイルスは感染力が強く、身近な危険になっているのに、治療法が不明な病気。通常の業務遂行により、感染リスクを引き受けても、やむを得ない危険とはいえません。
また、使用者には労働者を労働による事故や疾病から守る、安全配慮義務があります。テレワークを指示し、感染者が出ると消毒して濃厚接触者に自宅待機を命じるのは、この一環です。そこで感染の危険があるのに、使用者が対策を講じないまま就労を命じた場合、安全な職場を提供しないのですから、労働者は出勤を拒否できます。
スーパーなどでは、従業員に顧客と距離を取らせたり、遮蔽を設置して顧客との濃厚接触を回避させ、マスクや手袋の着用、手洗い、消毒を励行させるなどの感染防止に努めていると思います。しかし、プロである病院内での感染の多発からは万全といえる防止策なのかは疑問です。