治療法の確立や感染終息までの間、身の危険を感じる従業員が出勤命令に従わずに休んだ場合、職務命令違反を理由に解雇しても、合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、無効になるでしょう。その代わり、賃金の支払いはありません。使用者は休まれては困るし、従業員も休みたくはないはず。
ご質問の危険手当は、就業規則等で合意されていないと請求できません。パート契約時に約束がなければ、労使の交渉事になります。防止策を取っても、感染の不安は払拭されません。だからこそ名目はともかく、士気を高める意味でも、従業員の働く意気に手厚く報いることは極めて合理的です。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年6月5日号