振り返れば、世界の航空業界は2001年の米「9.11テロ」以降、再編を繰り返してきた。2004年のエールフランスとKLMオランダ航空の合併を皮切りに、米国でも大再編が進んだ。
「航空業界には人口1億人に1社の法則があり、米国はアメリカン航空など大手3社に再編された。それにならえば、人口1億人余りの日本は1社でいいことになる」(有森氏)
ANAの片野坂真哉・社長も『日経ビジネス』(4月13日号)のインタビューで、JAL・ANAの2社が必要かという議論が出てくる可能性を問われ、〈そういう議論が出てきたときには、どう動くかも考えておかなければならない。仮にそうなっても救済される立場でなく、残る会社でないといけません〉とした。
2010年のJAL経営破綻後、業界首位に躍り出たANAの「ナショナル・フラッグキャリア」としての自負が覗く。
「JALの破綻処理は当時の民主党政権が主導した。破綻で借金が棒引きされ、経営体力も強化されたJALに批判が高まり、政権交代後の安倍政権はANA寄りとなる。羽田の発着枠拡大でANAに傾斜した配分をするだけでなく、2019年に政府専用機の整備をJALからANAに切り替えたのは象徴的な出来事といえるでしょう」(ジャーナリストの須田慎一郎氏)
官吏と商人は一緒になれない?
それだけに経営統合となれば、「ANAがJALを吸収するシナリオもあり得ない話ではない」と須田氏はみている。
「激しい国際競争のなか国内2社を競合させる必要がないとの考え方なら、国際線をANAに統一し、国内線を両社で分け合うやり方も考えられる。現実的にはJALの国際線発着枠を減らしてANAに“片寄せ”する形があり得るのではないか」
仮に2社が統合した場合、2002年にJALが国内3位のJASを統合した時のように、熾烈な綱引きでリストラやコスト削減がうまく進まない事態も考えられる。JALのOBで航空評論家の秀島一生氏が振り返る。
「労組の強いJAS出身者への厚遇などから社員同士の軋轢が絶えず、JAL社内は分裂状態だった。“JASを手に入れ国内線もトップになる”という野望が裏目に出た格好でした」